11月21日 15時36分 担当/講師 田辺公一
関西に住んでいた時から今まで約10年間フランス料理のレストランで働いてきた私は、毎年クリスマスには特別コースとしてのさまざまな料理や、その日、そのゲストに合うワインを考えながらサーヴさせていただく仕事に就いています。
このクリスマスの時期はまさに「特別な日」と言うにふさわしく、街が賑やかになってくると共に各レストランもいろいろと趣向を凝らした、いつもにも増して豪華な料理やワインを用意し、美しい飾りつけをしてお客様をお向かえします。
この世界中の人々が心を躍らせる特別な日のレストランのコース料理には、とりわけ豪華な食材達が肩を並べて来店したゲストを楽しませていますが、例えばフランス料理店であれば、キャビアに始まりフォワグラ、トリュフ、オマール海老、ブランド牛、これらの世界三大珍味をはじめとした豪華な食材を用いた料理はもちろんすばらしいことには間違いありませんが、この時期ならではの食材ということを踏まえると、私はターキーを思い浮かべます。
ターキーとはもちろん七面鳥のことですが、フランス語ではDindonダンドンと言われます。
レストランでは最近あまり見かけなくなってきたようにも思いますが、クリスマスの時期には家庭でもよく食べられている人気食材ではないかと思います。
そもそもクリスマスにはなぜターキーを食べるようになったのでしょうか?
中世のヨーロッパでご馳走といえば、豚や羊といった家畜の肉でした。
お祭りやお祝いのときには、丸焼きにした子豚や、野菜や果物などを詰めて焼かれた豚の頭などがテーブルの中央に置かれて、パーティーを盛り上げていたそうです。
しかし、ヨーロッパからアメリカ大陸に移住が始まり、住み慣れない土地での豚や羊の飼育はとても難しいものとなりました。
そこでヨーロッパの人々は、野生の七面鳥に目をつけ、豚や羊などの代わりに七面鳥を一羽まるごとローストして食べ始めたのです。
七面鳥はとても大きく一羽まるごとローストすれば、家族だけでなく、近所の人達みんなでお腹を満たすことができました。
その後、アメリカ大陸に渡ったヨーロッパの人々の間で生まれたこの習慣が、再びヨーロッパに伝わり、感謝際やクリスマスに七面鳥を食べるようになったそうです。
そしてクリスマスの風習と共に日本にも伝わったのだと考えられます。
ではこの七面鳥のローストに合わせるワインは?とお客様に聞かれそうなのですが、クリスマスにお出しするワインとしてまず私が考えるのは、ロゼシャンパンです。
12月の寒い時期に飲むシャンパンとして、ロゼは少し温かみのようなものを感じさせてくれます。少し大きめのグラスで香りをふくよかな印象にすれば、このターキーともよりいっそう相乗するのではないでしょうか。
レストランでボトルオーダーされたロゼシャンパンはそのテーブルを華やかな印象に変えます。食前にアペリティフとしてよく冷やして供され、食事が進むごとに少しずつ温度を上げながらサービスされていきます。
前菜から魚料理、肉料理まで「それぞれの料理の持つ温度帯」に合わせてサービスされることにより、どのような料理ともうまく相乗することができるのです。
最後はまた少し冷やしめにしてデザートに合わせる、というふうにサービス温度を工夫することによりいろいろな表情を見せるのがこのロゼであり、ソムリエの力量が特に反映されるアイテムだと思います。
クリスマスの時期のワインについてもう少しお話しましょう。
もし料理との相性という観点から少し離れて考えるとすれば、私の一番のお勧めは Vin Chaud ヴァン・ショー いわゆるホットワインです。
日本ではあまり馴染みがないかと思いますが、冬がとても寒いヨーロッパの地域ではこの時期よく飲まれています。
私が勤めていた東京のホテルでは、イギリス人のマネージャーの発案で毎年12月になると屋外からいらっしゃったゲストの方たちの冷えた体を温めていただくために、ご来店されてすぐに振舞い酒としてこのヴァン・ショーをお出ししていました。
たっぷりの赤ワインに、オレンジとレモンの皮、アニス、シナモン、クローブそして砂糖とハチミツを入れて火にかけて、沸騰する直前で火を止めます。仕上げに小さく刻んだリンゴを入れて出来上がりです。
日本人の私でさえ、なにか懐かしく癒される香り、飲むと心も体も温まります。
ゲストの方々にも毎年とても好評でした。ご家庭等でも材料さえ揃えれば簡単に作ることができるので、ぜひトライしていただければと思います。
皆様、今年も美味しい料理とワインをお供に楽しいクリスマスをお過ごしください。
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